一瞬見ただけじゃ癖っ毛の黒髪ってことしか分からなかった彼は……うん。耳のピアス多すぎ。
あと学ランの下からのぞく真っ黄色のTシャツが目の毒。『KEEP OUT』って文字でも印刷しとけばいいんじゃないの。
「教室戻っちゃうんすか?」
「……うん。友達に買い物頼まれてるから、行かなきゃ」
「キャラメル味のかりんとう?」
じゃあ、と言い掛けた私を遮ったのはもうひとりの男の子。
一瞥しただけでヤンキーだと判断したけれど、ちゃんと目を合わせてもそのイメージは払拭できなかった。
目付きが悪い。睨むだけで人を呪えそう。
言わずもがな黒い学ランは羽織っているだけでボタン全開だし。ワイシャツの裾べろん、って出てる上にヤンキー座りだし。
腰パンしすぎてチャックあたりからズボン裂けちゃうんじゃないの大丈夫?
それにツーブロックで髪を後ろに流してるのはいいと思うけど、色がシルバーアッシュって何かぶれよ。
何より左の、それ。眉尻の少し上から目の横までズバッと斜めに切られたような、その古傷は一体どうしたの。