「えー? 処分はそりゃ嫌だろうけど、違くて。慣れてんべ? 高遠が同時にふたりの男に言い寄られるとか、日常茶飯事じゃん」

「…………」


いつ頭をぶつけたの、ミヤテン。

確かに日常茶飯事だけど、そこは否定しないけど、訊いてもいい?


「ふたりってどのふたり?」


きょとんとするミヤテンは一呼吸置いてから吹き出した。


「はははっ! 何、めずらしく照れてる? トラとバクに決まってんじゃんかーっ」


決まってるなんて初耳だし、照れてもいませんけど!?


屈辱から眉を寄せ小刻みに震えていると、ミヤテンは「あれ? 俺間違った?」なんて勘違いもはなはだしい。


するとミーアが私から離れ、ミヤテンの隣へ並ぶようにドアの縦枠に寄りかかった。


「“私的トラブル”は、トラとバクが楓鹿の彼氏の座をめぐった争いってことになってるらしいよ」

「……、らしいよ? 今、あたかも小耳に挟んだかのように、らしいよって言った?」

「耳にするたび否定してあげる優しさ持ってなくてごめんね」


申し訳なさなんて微塵も感じてないくせに、いけしゃあしゃあと……!


「なんだよじゃあ、言い寄られてるんじゃないの?」

「ミヤテン昨日見てなかったの!? 私はただ喧嘩の仲裁に入って巻き込まれただけなのっ!」


必死に悔しさを訴えるけれど、ミヤテンは4階にある家庭科室の掃除当番だったらしく、見掛けてすらいなかった。