「お願い一生のお願い! なんでもおごるから!」


腕に絡みついて懇願しようとも、ミーアはうんともすんとも言わず階段を上っていく。だからその肩にぐりぐりと頭を押し付け、あの手この手で気を引いてみる。


「妹の男友達とか紹介するからぁあっ……!」


ピタッ、と。ミーアは脚に急ブレーキをかけた。


釣れた!? 喜びに顔を上げたのも束の間、ミーアが立ち止まったのはクラスメイトとぶつかりそうになったからだった。


「びびったー……ごめんごめん。前見てなかったわ」


教室から一歩出たまま体を揺らして笑うのは、クラスの男子の中で1番小柄なミヤテンだった。

ミーアより少し大きいくらいで目線の高さも大して変わらないから、鉢合わせてお互いびっくりしたんだと思う。


「うちもごめん。なんか左腕が異様に重くてさ」

「えぇ? ああ。相変わらず仲いいのなー」


ミーアの左腕に抱きつく私を見たミヤテンは、握りこぶしを口元に持っていき、はははと笑う。


私はむっと頬を膨らませた。


「ミヤテン! 話の腰を折らないでっ」

「話ぃ? どうせまた三井のこと困らせてたんでしょ?」

「こ……っ! な、またってそんな、困らせるようなことは頼んでないもんっ」

「一緒に美化運動に参加してくれってしつこくて」

「え? なして? それって例の処分でしょ? 嫌なの?」

「嫌に決まってるじゃん! 何その不思議そうな顔っ」