ね? つぶらかで潤んだ瞳で訴えてもミーアには全く通じない。それどころか冷ややかな目で見つめ返してくる。


なんて恐ろしい子! 昨日だって事情を説明する私をちっとも庇ってくれなかったし、その上さっさと部活に行っちゃうし!


「私があの野獣どもと2週間も過ごして無事でいられると思うの!?」

「土日は休めるし、たかが放課の数時間だけじゃん。ガラス弁償するよりマシでしょー?」

「分かってない! ミーア、私の可愛さを分かってない!」

「分かってないのは楓鹿のほうかもねぇ」


ミーアはくすりと、ちょっとアヒル口の端をゆるませた。


「可愛いの前にエロを付けるの忘れてない?」

「――……、」

「2校時始まるから戻るよー」


……なんでちょっと笑いながら言ったの? おかしい想像でもした?


ちらり。掲示板に貼られた処分通知に目をやると、一瞬フリーズしていた思考回路が回復し始める。


エロ……蕪早虎鉄……男……ヤンキー……そしてバクという、痴漢……っ。


「いやああああ!!! やだ! ミーア待って! お願いだから一緒についてきてえええ!」


ぞっとした私は半べそをかきながら、今にも曲がり角へ消えてしまいそうなミーアを追いかける。


なのに振り向きもしてくれなくて、50m走8.76秒の脚力を発揮するはめになった。