「楓鹿。何回見たって、そこに書いてあるのは楓鹿のことだからね?」


下駄箱正面にある連絡掲示板には、処分通知なるものが貼られている。


登校した生徒全てが通るこの場所は、朝にたくさんの人だかりができていた。私も例外なくこの処分通知に目を通したひとり。


でも、未だに信じられない。


朝、そして校庭での体育を終えた今も、目の前にある自分の名前っぽいものが霞んで見える。


それはただの現実逃避だと分かっていても、どうしても認めたくない。認めたくないけど、繰り返し読んでしまったせいで暗記してしまった。


処分通知……審議の結果、以下の者に……ああほら。私、今すっごく笑顔になってる。


「なんで?」

「あー。やっと認めたねぇ」


ぐるりと斜め後ろにいたミーアに振り返り、その肩を鷲掴みにした。


「なんで私が処分を受けてレポート提出なんていう救済措置まで取られなきゃいけないの!?」

「さー。楓鹿が箒を蹴らなきゃガラスは割れなかったってことでしょ」

「異議あり!」

「喧嘩の仲裁するなら脚じゃなくて口でってことじゃない?」

「納得いかない! 私の名前が1番上にあるのも納得いかない!」

「分かったよもー……じゃあこの処分通知は無視して、ね? もっと重い処分を受ければいいよ」


何それ願い? ミーアの願い?


そこは『先生に掛け合ってあげるから』って優しく微笑んでくれるとこだよね?