それはもうしょうがない。おバカさんには何を言ったってしょうがない。


だから笑顔で実力行使に出ることにした。またパンツを見られる可能性なんて最早どうでもいい。


自分より背が大きくて体格のいいふたりのどちらかに蹴りを入れたら、私のか弱くて細い足が折れるかもしれないっていう心配はちゃんとしていた。


その上で狙いを定めたのは、バクが構え、スイングしようとした箒の柄だった。


「喧嘩は他所でやりなさいっ!」


ガンッ!と蹴飛ばした音と共に足の裏に確かな感触を捉えれば、


「はっ!?」


バクが驚きの声を上げ、握り締めていた箒と一緒に後ろへよろめくのが見えた。


そして「あ」と蕪早虎鉄が呟いてすぐにガシャーン!と何かが割れ、私は一瞬で青ざめる。


どうやら憤慨した私の蹴飛ばす力というのは火事場の馬鹿力ではなく、元から相当なものだったらしい。


まるで暴風に傘をさらわれたが如く後ろによろめいたバクが踏ん張る前に、箒の柄が廊下の窓ガラスに激突した。


「……」


一部始終を観に廊下へ出ていた生徒は沈黙を保っているけれど、廊下の端からは事態を把握しようと慌ただしい声が上がっている。


「え。あれって……バンビ?」


なんて声も聞こえて、思わず声を張った。


「ガラスが割れた!」

「――ぶはっ!」


蕪早虎鉄が吹き出したかと思うと、窓の外を見下ろしていたミーアが振り返る。