あれはまずい。血に飢えた獣のような目をしている。


その証拠に立ち上がったバクはどうしてか、そばにいたミーアが持っていた箒を掴んだ。


何気なしに手放したミーアもどうかと思うけど、箒の柄を蕪早虎鉄に向けるバクには嫌な予感しかしない。


箒は手足の代わりでもなければ槍でも警棒でもないはずなのに――。


「トラにはリーチじゃ敵わねぇからな」


このやる気だよ。
箒を掃除以外の用途に使う気満々ですよ。


バクに白い目を向けていた私は、蕪早虎鉄が間合いを取ったことでハッとする。


「なんで応戦する気になってるのよっ」

「大丈夫っすよ。次は一撃で沈めるんで」

「はあ!?」


だったら最初っから一撃で仕留めろ……って違くて!


「喧嘩するなら余所で、」

「1ダウンにつき飲み物1本なー」


かぶせて言うバクにも腹が立ったけど、周り、特に私への迷惑を顧みないヤンキーコンビに堪忍袋の緒が切れた。


でも私は笑顔だった。

どうやら私は怒りが湧くほど笑顔を浮かべる傾向にあるみたいで、ミーアいわく『高遠家の女はみんなそう』らしい。


だからなんだって話だけどさ。


「バカバクが俺を伸せたことがあったかよ」


この当初の目的忘れてんじゃないかってヤンキーも。


「知能戦じゃバカトラには負け無しなんだけどねー」


知るかまず謝れ!って感じの痴漢野郎も。


学校しかも2年生の階で喧嘩をおっ始めようなんて、どれだけ単細胞なんだって話よね。