「何者だとしても、印象最悪なことに変わりはないから」
反撃の代わりに発した言葉は本心だから良しとした。
目を逸らして言ったのはべつに怖いからじゃない。
めちゃくちゃ眼を付けられている気がするけど、びびってなんかいない。
嘘は言ってないんだから、どれだけ睨まれたって私は屈しない!
キッと睨み返したら、距離感がつかめていなかったせいで蕪早虎鉄の顎を睨んでしまい、羞恥から身悶えそうになる。
すると、蕪早虎鉄がニッと不敵な笑みを浮かべたのが分かった。
「なら、俺が代わりに一発殴ってチャラってことで、どーっすか」
「……、」
「バクはああ見えて強いから、女の先輩が殴ったところで大したダメージないんで」
「……」
「任せてください」
「え?」
と、ようやく反応したときには背を向けられていた。
任せろって何? 頼んでないけど?
殴ってくれるんならそりゃもう心の底からスカッとするけど…………え?
廊下に向かう蕪早虎鉄から、ボキボキと指の骨を鳴らす音が聞こえるみたいだった。
い……今? 嘘でしょ。待ちなさいそこの危険分子。
バクが蕪早虎鉄に胸倉を掴まれ「あ?」と訝しんだ瞬間、振り被られた腕に私は廊下に一歩踏み込んでいた。
「ちょっと!」