背後から掛けられた声に振り返れば、蕪早虎鉄が立っていた。


ち、近……っなん、なんで教室に入ってきてるのこの子! クラスメイトの視線は無視か!


「あいつ言い出すと聞かなくて。すんません……って、なんすか。俺そんな怖いっすか」


机ひとつ分をバリケードにして距離を取った私を不服そうに見ながらも、蕪早虎鉄は口元をゆるませている。


怖い怖くないとかの前に、デカい。


昼休みはしゃがんでいたから分からなかったけど、私からすれば170センチ台は充分高身長。


こんな大男に押し倒されようものなら、私なんかひとたまりもない。


助けてほしくて廊下に視線を送っているのに、ミーアはバクなんかと笑顔で話していて見向きもしてくれない。


これだからDT年下キラーは……!!


わなわなと体を震わせていると、私の手から携帯が抜き取られる。蕪早虎鉄が私のマイプロフィールを自分の携帯に送っているみたいだった。


痴漢の友人はひったくり犯ですか、そうですか。


いやまあ教えるって言ったのは私だけどね? 言っておきながら一向に教えようとしなかったのも私だけどね?


その、『さっさと教えろよ』的な態度が気に入らない!


「送ったなら早く返してよ」


右手を差し出すと、険をまとう瞳が私に焦点を合わせた。