なんで飄々と自己紹介してるのよ。


「今後いっさい関わる気はありませんけど?」


相変わらず教室内に身を隠しながら言った私に、蕪早虎鉄は目を丸くさせた。かと思えば眉を八の字にする。


「そーっすよね。怒ってるんすね、バカバクのこと」

「怒ってる怒ってないとかの次元じゃないし……」

「まーまー! 俺のことは置いといて、本題があるんすよ!」


なんでアンタが仕切ってるの!? 少しは悪びれてみろっ!


「これなーんだっ!」


渾身の睨みは意味もなさないまま、痴漢もといバクが掲げたのは見覚えのある、かりんとうだった。


「これ、バンビ先輩が投げたあと壁に当たって袋が破裂しちゃったんすよ。んでまあ、元々は頼まれて買ったものだったんで、どうしたもんかなーと思いまして」

「…………」


何その無茶ぶり。
袋が破裂したって、どんだけ飽和状態よ。ありえないでしょ。


ていうかあの至近距離でアンタの顔に当たらなかったの!?


「たかが菓子だし、弁償してくださいなんて、ちっせーことしたくないんすけどね? 頼んできた奴が怖いもんで。さすがになんの詫びもなしに『売り切れでした』じゃ済まないんすよ」


なんだろうこの、気が遠くなるような言いがかりは。


そもそも、あげるって言ってきたのは蕪早虎鉄じゃんか。