「あはは。すげー威嚇してる」


痴漢は目より上以外を教室内に隠し、廊下を睨む私を笑う。


すると突然、視界が学ランとワイシャツのモノクロだけになった。そろりと視線を上げれば、


「……っす」


と挨拶なのか知らないけど、きゃらめる男が立っていた。


こいつも共犯に違いない。だってこいつが、かりんとうから手を離さない隙にスカートの中を覗かれていたんだから!


「ちょっと楓鹿。何これ。本当にこのふたりなの?」

「そうだよ! このふたりだよ!」

「へぇ~……きみら、トラとバクでしょ?」

「うっは! ミーア先輩が知ってるとか、俺らってば有名じーんっ」


痴漢野郎に渾身の回し蹴りをお見舞いしてもいいかな。


でもまたパンツを見られる可能性が……。と踏みとどまっていれば、ミーアが私を見ながら痴漢を指差した。


「こっちがバクでー」

「えっ。ミーア先輩が紹介してくれんの? どーもーっ! 場工谷(ばくたに)だからバクって呼ばれてまーす!」

「で、そっちがトラ」


ミーアに指差されたきゃらめる男は私に視線を戻し、軽く頭を下げた。


窓から差し込む光に照らされ、シルバーアッシュの髪がきらりと輝く。


「1年E組、蕪早 虎鉄(かぶらばや こてつ)。トラって呼ばれてますけど、好きに呼んでいーっすよ」