「私とかりんとう、どっちが大事なの!?」
勢いよく顔を上げればミーアは「分かったよ、もー……」と袋の口を折りたたんでくれる。
「チャイム鳴るから放課後ね」
「……」
あげる、と。休み時間はまだ残っているというのに、ミーアはかりんとうの袋を私の机に置いて自分の席へ戻って行った。
もうミーアなんかに教えてやらないんだからね!って言いたい! でも聞いてほしくて堪らないから言えない! つらい!
「バンビが葛藤してる」
「小刻みに震えてるのが生まれたての子鹿みたいだね」
そんなクラスメイトの生温かい声と視線を受けながら、今か今かと放課後を待った。
結局は我慢できず、
≪1年男子にスカートの中を覗かれたの! ヒモパン超セクシーっすね!って言われたの! 校内で痴漢が出たという恐怖! どこに被害届を出すべき!?≫
と、授業中にミーアへメールを送ってしまった。
もちろん返事は届かぬまま、清掃時間を迎えて覗き魔の話をしたのだけど。
「学校にヒモパン履いてこないでよ~」
「他にもっと着目すべき点があったと思うよ!?」
廊下に立つミーアは退屈そうに箒の柄の先に顎を乗せ、教室のドア枠に寄りかかる私を眺める。