「可愛いことは素晴らしいけど、可愛いだけじゃ幸せになれないの」


5限目の休み時間、真向かいでかりんとうを食べるミーアがじっと見つめてくる。


「だからそんな風に育っちゃったのかぁ」

「そんな風って!? 可愛くて勉強も運動も料理も人並み以上にできる私に何か問題でも!?」

「問題だらけじゃん。楓鹿の可愛さは本当に無駄だよ?」

「無駄でもあげられないんだからしょうがないと思って生きてるの」

「んー。もらえたとしても断るけどね」

「えっ?」

「土下座して咽び泣いてでも断るよ、うちは」


……うん。まあ、ミーアは充分きれいだもんね。


私並に可愛いと色々問題が起きるってことも、ミーアなら重々承知だろうけど、


「ひどい!」


土下座して咽び泣いてでも断られてしまう可愛さを持って生まれた私が、かわいそうな子みたいじゃんか!


小首を傾げるミーアはさっきからぼりぼりガリガリと、かりんとうを食べている。だけどそれは私が大変な目に合って手に入れるはずだったものじゃない。


「キャラメル味がいいって言ったくせにっ」


どうして今ぷれ~ん味を食べてるわけ!?


「だって売り切れてたんでしょ? しょうがないじゃん」

「私がどんな目にあったかも知らないでっ」

「んー。なんかあったなーとは思ったけど、巻き込まれたくないから一生訊かない」


この薄情者! 真顔でなんてこと言うの! 泣いてやるんだから!


そう目で訴えても、哀愁を帯びながら机に突っ伏してみても、ぼりぼりという音が止むことはない。