しかしかりんとうはもらう!
袋を奪い取った私の目に、紙パックジュースのストローを銜えたもうひとりの男子が映る。
え……?
スカートの中、覗いて……ないない。
まさかそんなあからさまに覗く変態がいるはずない。
はたと目が合った黒髪ヤンキーは上半身を起こすことなく、破顔一笑する。
「ヒモパン超セクシーっすね! バンビ先輩!」
身に付けている下着を言い当てられた私は、ぶるっと肩や背筋が震えたと認識する前に「い……っ」と発していた。
「あ、俺1年のバク――ッ」
「いやああああああああ!!!!」
私は力の限り袋を覗き魔の顔面に投げ付け、
「くたばれ痴漢野郎!!」
と捨て台詞を吐いて逃げ出した。
最悪! 最っっっ悪!
今日はなんて日なの! ストーカー予備軍といいヤンキーといい覗き魔といい! 次から次へと出てきやがって!
「私が何したっていうのよぉおおお!!!」
5月16日、月曜日。
校舎の正面玄関にたどり着くなり叫んだそれへ答えるように、ふたり分の大笑いが聞こえた気がした。