ふらり、ふらり、どこか地に足が着いていないような危なげな足取りで窓際まで歩いだ黒゙。
それを視線で追いながら、黒の着物がやけに色っぽいななんて考えていた私の名を呼ぶ声。
「茅場 椿。」
「……、…え?」
「どうして、゙俺が見える゙?」
その発言からして、やっぱり人間じゃなかったのかこの人、なんて暢気に考えている私。
何で名前知ってるんだろう、という思いも。人間じゃないんだから当然か、なんて偏見で考えている。
゙黒゙は自分の質問に何時までも答えない私に苛立ったように眉を寄せた。それでハッとし、急いで言葉を吐き出す。
「わ、かりません…!」
「……。」
「何時も、見えてたから…」
「…何時から?」
「えー、と…。高校入学してからあの歩道橋通りだしたんで、その時くらいから…?」
そう言って首を傾げた私に、゙黒゙はうーんと悩む仕草を見せた。
その口元がゆるく弧を描いているから、本当に悩んでいるかは謎だが。