ハッキリと、声が聞こえた。それも夕方に聞いたあの人の、色気だだ漏れな甘い声だ。

閉じていた瞼を持ち上げれば、闇夜の世界が広がる。



ベッドの横にある窓、カーテンがひらりと揺れていた。夏場にも関わらず冷たい風が肌を撫で、窓を閉め忘れていたと冷静に考えていれば。


…窓がある右側、ではなく。左側に、誰かの気配を感じた。




「おや、俺が見えないのか?」

「…、……っ、」

「嗚呼、よかった、無駄足かと思ったよ。おはよう、愚かな少女。」



そう言い微笑んだ彼は、柔らかく優しい口調を続けていて、それが何だか窮屈そうに見えた。


何故か、「どうして部屋の中に居るんだろう?」と考える前に「会えた」と想っていた私は。ゆっくり体を起こしで黒゙と向き合う。




「…もっと、普通に話していいですよ。」

「…。」

「無理しないで。」

「……それは、助かる。」



ふ、と嘲笑にもにた微笑を漏らすと。゙黒゙は闇みたいなダークブルーの瞳に私を映した。




「――恨むなら、自分の人生を恨むんだな。」


゙黒゙が意地悪く、笑った。