でも彼は、どうしても引っ越したくなかった。


私と、


「・・・離れたく、なかったから・・。」


「でも、結局離れたじゃない、」


「・・ごめん、」




そして、彼は家出をした―。


小さかった彼は、家出をして、親に心配をかければ引越しをしなくて済むかと思ったのだという。






「馬鹿だね、」


「悪いかよ。」


そして彼は、迷子になった―。




一人で困っている所を、優しいお婆さんとお爺さんの夫婦が助けてくれたらしい、


それから、彼はずっとそのお婆さんとお爺さんの家で暮らした。






そして、中2の夏。


両親と再会した。と、言っても母親にだけ、らしいけど。


で、今に至る。




「・・ぶっ。」


「なっ、お前なに笑ってんだよ!」


彼は顔を赤面させて言う。




「素直に引っ越しちゃえばよかったのに、」


「しょうがねーだろっ、」