「ああ、そうだったね。ええと、確かブルーレイだったか?それなら第3会議室が空いているが。ただわたしらには、その、使い方が、あれで……」
「ああ、それなら僕がやりますから大丈夫です」
 風間さんがそう言うと、その委員長と呼ばれたおじいさんは心底ほっとした表情をした。
「すまんが頼むよ。わたしら年寄りには、どうもああいう新しい機械は……」
 それからこちら5人、日教連の偉い人たちらしい6人で隣の会議室に移った。風間さんがブルーレイをレコーダーにセットしている最中に委員長のおじいさんの携帯電話が鳴った。「ちょっと失礼するよ」と言って委員長のおじいさんは部屋の隅で電話に出た。その声が別に盗み聞きする気はなかったが、自然と俺の耳に聞こえてきた。
「もしもし、ああ先生。はあ……いや、そういう過激な事は慎んでいただきたいと先日も……ま、おっしゃる事は理解できますが、教育委員会の決定に干渉するような事はわたしどもとしてもですな……分かりました、分かりました……では、県選出の議員の先生に間に入っていただくようにしますから……いえ、ですから、そういう過激な行動は……よろしいですね」
 それから委員長のおじいさんは渋い顔で長机の反対側に座り、「いや待たせたね」と言った。風間さんがレコーダーをリモコンでスタートさせた。俺たちが全革連本部で見た、あの映像が次々にテレビのモニターに映し出された。
 最初は怪訝な顔で見ていた日教連の人たちの表情が段々険しくなった。委員長のおじいさんはしわくちゃの顔がますますしわくちゃになり、他の人たちも目を細めたり、顔を歪めたり、明らかに様子が変わってきた。1時間足らず、その映像を全部見終わると委員長のおじいさんが困り果てたような表情で上条さんに言った。苦虫を噛み潰したような顔っていうのはこんな表情なんだろうな。
「いやはや、今回のは強烈だね。上条君、君たちこれをどこで?」
 上条さんは穏やかに微笑みながら、しかしきっぱりとした口調で答えた。
「それを私たちが言うと思います?」
「ははは、これは愚問だったね。それでわたしらにどうしろと?」
「私たちの要求はいつでも同じです。最近また日教連の組合員の先生たちがやり過ぎになってます。少し押さえて下さい」