机が6つぐらい2列に並んでいて、座っていた全員が一斉に顔を上げて俺たちの方を見た。そこで俺は妙な違和感にとらわれた。それは全員60歳は絶対過ぎているとしか見えない人たちばかりだったからだ。一番奥の席にいた、度の強そうな眼鏡をかけて後頭部の白髪以外は見事に禿げあがったしわくちゃの痩せた男が椅子から立ち上がって俺たちの方へ歩いてきた。それも、にこにことうれしそうに笑いながらだ。そして上条さんの前に来て言った。
「いやあ、よく来てくれたね。上条委員長、君とは4カ月ぶりぐらいか?」
「はい。ご無沙汰しました」
 上条さんは上条さんで、これもにこにこ笑いながら旧知の仲みたいに愛想よくあいさつをしている。俺と前島は思わず顔を見合わせた。どういう事なんだ?これは?するとその男、というかおじいさんだな、その人が俺と前島に目を向けた。
「おや、その二人は初めて見る顔じゃないかね?君のところの新人さんかい?」
「あ、いえ」
 上条さんが代わりに答えてくれた。
「この子たちは今日は、まあ、社会見学というところです。ご一緒させてよろしいですか?」
「ああ、もちろんだとも。で、君たちはどこの高校?」
「あの、いえ、あたしたちは中学生です」
 前島がそう答えると、残りの5人のおじいさん、おばあさんという感じの人たち全員が我先にこっちへやってきた。口々に俺と前島に言う。
「あら、まあ。中学生がここを訪ねてくれたのなんて何年ぶりかしら。その制服は都内の学校?」
「いやあ、外は暑かっただろう。すぐ麦茶を出すからね。いやジュースの方がいいのかな?」
「そうかそうか、中学生かね。ああ、ちょうどいいお菓子があるんだが、君たち、クッキーは好きかね?」
「まあまあ」
 上条さんたちが俺とその人たちの間に割り込んで止めてくれた。
「委員長さんも他のみなさんも、まず用事を済ませましょう」