前島が当惑した表情で聞き返す。
「行くって、どこへ、ですか?」
「悪の大魔王の本拠地、日教連総本部よ」
 こともなげにそう言った上条さんを、俺と前島は息がとまるような驚愕の思いで見つめた。全国の学校現場とその教師たちの多くを支配している組織の、その総本部に乗り込む?俺は竹本さんと風間さんの方に助けを求めて視線を向けた。でもこっちに二人も平然とした顔をしている。それどころか竹本さんまでこう言った。
「確かにそろそろ行く頃合いだね。で、いつにする、姫」
「善は急げ。明後日なんかどう?松陰君と前島さんは都合どう?」
 俺はまず横にいる前島の顔を見た。前島は一瞬考え込んだように見えたが、決然とした表情で大きくうなずきながら答えた。
「大丈夫です。お願いします」
 じゃあ、俺が行かないとは言えない。俺もそれでいいと上条さんに返事した。上条さんは時計を見ながら俺たちに言った。
「雨はもう上がったけど、これから帰ると夜になるわね。ここに泊って行ってもいいけど、君たちおうちの人とか大丈夫」
 俺たちが親に同性に友人とキャンプに行くと親に嘘をついて出てきた事を告げると、上条さんはなぜか嬉しそうにポンと両手をたたいて俺たちに言った。
「じゃあ泊って行きなさい。ここはキャンプ地だし、私たちと一緒なら嘘をついた事にはならないわ。あ、もちろん、男子と女子、寝室は別々よ。後でなんかあっても、私が証人になってあげる」
 横から風間さんが混ぜっ返した。
「松陰君の貞操が、そこのおねえさんに奪われなかった事は俺たちが証言してやるよ」
「うるさいわね!ショタコンの趣味はないわよ!」
 笑いつつも拳を振り上げて迫ってくる上条さんから逃げるように風間さんは部屋から走り出た。ドアを開けながら言う。
「じゃあ、今夜はバーベキューにしよう。ついでに線香花火も買って来るよ」