「いや、ちょっと変じゃないですか、それ。前島もさっき言ってたけど、それと文学とどういう関係が?」
「日教連はずっと日の丸、君が代反対がいわば目玉商品だった。でも、それはやりにくくなった。そこで攻撃する相手を、マンガやアニメを規制しようとする政治家に変えた。ちょうど日本中で学力低下が問題になって、学校の教科書なんかに古臭いマンガのキャラとかが盛んに使われるようになっていたから、若者のためにポップカルチャーの自由を守れ、それを侵す奴らと闘うぞ。それが日教連の新しい目玉商品になった。ポップカルチャーの反対は何だい?伝統的な芸術だろ?小説なら文学作品って事になる。ここでも変な方向への暴走が起きたんだ。それなりにちゃんとした内容のライトノベルを生徒に推奨する程度なら別にいいだろうけど、一部の暴走した日教連の教師たちが、文学作品を目の敵にし始めたんだ。そして応援している政党の政治家に圧力をかけさせて、文学作品を有害図書扱いにして、ついには18禁にした」
「そんなの……馬鹿げてる!」
 前島がとうとうたまりかねたのか、俺がびっくりして飛び上がるような金切り声で叫んだ。
「何だか、こう思えるんですけど。日教連って、要するにただ何か権威ある者に反抗したいだけなんじゃないんですか?日の丸、君が代だって、性教育だった、今言っている事とたった十年ぐらい前にやっていた事が180度逆転してる。今ライトノベルやアニメやマンガを学校で熱心に奨励してるのだって、要するに誰かに反抗するために便利だから。それだけの事なんじゃないんですか?」
 それまで黙って聞いていた上条さんが意味ありげな微笑を顔に浮かべて前島に言った。
「だったら確かめに行く気ある?」
「は?」
 俺と前島はまたしてもそろって同じセリフを期せずして口にした。
「ああいう証拠が手に入ったから、さっそく行ってみようと思うのよ。日教練が本当にそういう組織なのか知りたいなら一緒に連れて行ってあげるわよ」