「待って下さい!」
 前島が竹本さんの話を遮った。
「それと日教連が社会主義だったという話と、どういう関係があるんですか?」
「その挫折した社会主義革命の戦士たちが学校教師になったからだよ」
 今度は作業を終えた風間さんが話に加わって来た。
「今では僕も信じられないんだけどね、当時の日本は高度経済成長時代と言って、とても景気が良かったんだ。今と違って大学出ていれば就職先はよりどりみどり。日本全体が人手不足だったから、当時は民間企業より安月給だった公立学校の教師になりたがる人はあまりいなかった。特に社会科の教師はものすごく不足していたんだ。そこに革命運動にうつつを抜かしていた学生が大勢就職したわけさ」
「でもその人たちは、青春時代の夢を捨て切れていなかった」
 また上条さんが話に入って来た。
「つまり日本の社会主義化ね。社会主義革命勢力そのものは衰退したけど、その夢を共有する人たちが学校という狭い閉鎖社会の中に集まった。もちろん日教連に加入していた先生たちの全員がそうじゃなかったけど、学校教師なら簡単になれるって時代に先生になった人たちも、段々年取って職場で先輩になっていくでしょ?新しく先生になって日教連に加入してきた若い人たちを洗脳し始めたわけね。その結果いつの間にか、日教連は左翼の巣窟みたいになってしまった。そして学校の先生たちがその立場を利用して、今度は学校の生徒に共産主義思想を吹き込もうとし始めた。当時は政治の世界ではまだ社会主義を標榜する政党が力を持っていたから、選挙でそういう政党を応援する事で日教連の政治的影響力も強くなっていった。と同時に、共産主義思想を正当化するために、当時の中国や北朝鮮をこの世の楽園だと宣伝して、資本主義の日本がいかにダメな国かを生徒に教え込むようになったわけ。日本は第二次世界大戦で周りの国にも、自分のとこも国民にもさんざんひどい事したからね。その事実を利用して、日本はダメな国、だから君たち若者がいつか共産主義革命を起こせ、って教え込もうとしたわけ。日の丸と君が代は戦前から引き継いだ国旗国歌だから、若者をダメにする悪の象徴である。これが日教連のスローガンだった時代があったのよ」