「…もぉ大丈夫だから、顔上げろよ。」


優しく言う俺に清水は、恐る恐る顔を上げて。


涙を溜めた瞳を拭ってやった。



「離して!」


ハッとしたように清水は声を上げ、俺から急いで体を離して。


瞬間に、そのぬくもりが消える。



「…何でアンタが…あたしを助けるのよ…!」


顔を俯かせた清水はまた声を震わせて。



「…だって、しょうがねぇじゃん。
お前のこと好きだから…しょうがねぇじゃんか…」


「―――ッ!」


恐る恐る顔を上げた清水は、目を見開いて俺を捕える。


とても信じられないとでも言いたいのだろう。



「…いい加減、俺の言うこと信じてくれよ…」



どんな時でも彼女は、泣いたりなんかしなかったのに。


その痛々しいほどの姿に、ただ胸が締め付けられて。


何でも良いから傍に居たかった。


ゆっくりと近づき俺は、再びその体を抱き締めて。


やっぱり震えているのかと思うと、不意に俺の服を握り締めて。


その細い腕に、少しだけ安心することが出来た。



「…プリン忘れてんだけど、取りに来てくれない?
ほら、賞味期限もヤバいしさぁ。」


口元を緩ませる俺に顔を上げた清水は、諦めたように力なく笑って。



「ねぇ。」


「ん?」


顔を傾け瞬間、耳を引っ張られた。


久々のそれに俺は、イーッと声を上げて。


ある意味ショックで、言葉も出ない。