「…この前…親父と進路のことで喧嘩してさぁ…」


ポツリポツリと、白石は話しだした。



「…バンドのことも馬鹿にされるし、フリーターになることも反対されちゃって。
久々に学校来てみたら、あのクソ女が…」


そこまで言い白石は、言葉を飲み込んだ。


“クソ女”とは、傍に居た桜井先生のことだろうが。



「…何か言われたのか?」


俺の言葉に白石は、コクリと頷いて。



「…俺が居ると、みんなの迷惑なんだと。
おまけに“怖い”ときたもんだ。」


ハッと白石は、自嘲気味に笑って。


あの女教師は、ほとほと問題ばかり起こしてくれる。



「だからって、机投げるなよ。
まぁ、お前の気持ちもわからなくもないけどさぁ。」


そう言って俺は、ため息を吐き出しながらこめかみを押さえた。


庇ってやりたい気持ちはあるが、暴れたんじゃ心証も悪い。



「…俺、退学?」


いつかの清水みたいな力のない瞳で、白石は俺を見上げてきた。


そんな顔をされては、嫌味のひとつも言えなくて。



「…まぁ、理由が理由だし、俺も何とか頑張ってやるよ。
その代わり、貸しにしとくぞ?」


「…貸し、って…」



いや、清水のことで何かあったときに、使えそうだし。


だけど、そんなことは言えないんだよね。



「そーゆーことだ。
帰って良いから、反省しとけ!」


強引に話を終わらせ俺は、その頭を軽く叩く。


少し楽になったのか白石も、俺に向けて力なく笑って。