「ありがとうございました!」

窓ガラスの修理も無事済んで、俺は自分の部屋に雪奈を呼びに戻った。

「雪奈、ガラス修理終わっ・・・雪奈!?何してる!?血出てるじゃん!やめろ!」

そこには、必死に唇を拭いてる雪奈の姿があった。
強く擦られ過ぎた雪奈の柔らかい唇からは、血が滲み出ていた。

「なくならないの・・・消えないの・・・門脇くんの感触が消えないの・・・」

俺の言葉も聞かず、泣きながら必死に唇を拭いている雪奈。
俺はその手を掴み、雪奈を抱きしめた。
それでも唇を拭こうとする雪奈。

「大丈夫だから!雪奈、もう大丈夫だから!」

そう言って雪奈を強く抱きしめる。
すると雪奈は泣きながら話しだした。

「あたし・・・初めてだったの・・・ファーストキスだったの・・・初めては・・・好きな人としたかった・・・好きな人としたかったの・・・こんなの・・・いやだ・・・」

そう言って泣き崩れた雪奈。

雪奈・・・雪奈の初めては門脇じゃねぇよ。俺なんだよ。

そう言ってやることも出来ずにいた俺は、

「大丈夫だから・・・」

と言って、雪奈にそっとキスをした。
何ヶ月ぶりかの雪奈とのキスは、少し血の味がした。