母は隣で


「ここは歯医者さん。」


「ここは美容院。」


と説明してくれながら歩いた

私はその声を聞きながら歩数と店の位置を

頭の地図にインプットしていった


今まで感じなかった音や匂い、触感…

何もかもが新鮮に感じられた


目が見えるだけで

こんなに注意が散漫になっていたのか

と思わされる瞬間だった


それから30分くらい歩いただろうか…

今までなら10分でたどり着けるところだが

そう簡単にスタスタとは歩けない

私はいつの間にか懐かしい公園に到着していた


公園では子供達の声が聞こえる

とても無邪気な声だ

どこからともなく甘い香りが私の鼻をくすぐった


「おねえたん!」