「ここかぁ…」

正門を見上げ、改めてあたしは高校生になったんだなと思う。
こんなあたしが高校生かぁ。

入学式もすぐに終わ…るわけなく、
なっがーい話があってから終わった。

周りの子は友達と話してる。
当然、あたしはそんなこともなく
すぐに自分の教室に向かった。

黒板には
席順が書いてある。

えーっと…日向、日向…っと…

ラッキーなことにあたしは一番後ろの窓際をとることが出来た。

周りの人をさけながら、自分の席に向かう。
するとそこには先客がいた。

その人はあたしの隣の席の人らしく、机に寝ていた。

入学早々に寝れるんだぁ。ってこの人男じゃん。

なんてことを考えながら自分の席に座った。

とりあえず、一安心かなぁ…ん?

なぜか視線を感じた。
それも右側から…。

そぅっと右を見る。

「うわっ」

右を見てみるとさっきの男の人があたしを見ていた。
腕の間から見えたその人の目は、寝起きだったからだろう。
とろん、としていた。
可愛いんですけど…。

「誰…?」

やっぱり寝起きだ。
しゃべり方がゆっくりだし。
しかも、あくびまでしてるし…。

「え、えーっと…ひ、日向このみ…です…?」

「なんで疑問形。しかも敬語だし」

ははっ、と顔の向きを変えながら笑った。
まぁ、でもそうだよね。
同級生なんだし。

「君はなんて名前?」

「ん…」

男の人は指だけを動かして黒板を指した。
あたしの名前の隣には、『五十嵐隼人』の文字が。
ってあたしには自己紹介させといて自分はそれかいっ。

「えーっと…五十嵐、君?」

腕の中に顔をうめながら、軽く頷いた。

じゃぁ、よろしくね。
そう言った時にはもう五十嵐君は、寝息をたてていた。

五十嵐君は猫そっくりだな。

隣の猫とあたしの高校生活がそこから始まった。