「お、おじゃまします…」



「どうぞ」




彼の部屋は額縁やキャンパスだらけで、極彩色に彩られていた。



赤い花、黄色い魚、青い空。


『もの』の色がハッキリしてそれぞれの美しさを引き立てるような、絵。



彼が描いたのかとおどろいて彼を見ると、苦笑いを返された。





「…これは父さんの…で」



「お父さんは…絵を描くひと?」



「画家…」





彼はゆっくりとしゃべるひとだった。



歯切れが悪そうで、それは単にわたしのことが苦手だからなんだと思った。





「如月は…何か用?」



「あ…えっと、」





特に用なんてなかった。


ただ、彼の蝶が見たかっただけだから。