「どこ行くん」
彼女の提案に、すっかり打ち解けた彼が聞いた。
「それなんだけど…これ、この前おばあちゃんがくれたの」
「…水族館?」
「そう、近くのあるでしょ?そこのチケットを最近もらって…よかったら」
そう言って沙羅ちゃんは机のうえに二枚チケットをおいた。
チケットには水族館にいるのであろう魚の水彩画が描かれている。
同時に、ずっと前に見た彼の部屋の黄色い魚がよぎった。
柔らかい水彩画とは対照的な、どちらかというと現代アートに近い、鮮やかな熱帯魚…。
実際に熱帯魚かはわからないけど、きれいな色だったのははっきりと覚えている。