次の日から、沙羅ちゃんに話しかけられることが多くなった。
何かにつけ、彼のもとへ行きたがる彼女を、私は彼に紹介した。
「…この子が清水沙羅ちゃん。こっちが陽…じゃなくて越野陽平くん」
「…その子が…雪子の?」
「うん、そう」
彼は慣れない人前だからか、最初に出会った頃のようにゆっくりと話した。
「ご、ごめんなさい、越野くんも…びっくりしたよね?」
「…別に…いい…」
「わたし…その、雪子ちゃんから聞いてた越野くんがどんなひとか、気になってて…」
これは前から打ち合わせ済の「タテマエ」。
沙羅ちゃんが恥ずかしいのを気にせず話せるように。