「…んふふ、何でもない」



「なに…変な笑い方して?」


「変ってひどい」


文句をいいながら笑うと彼もつられて笑う。



でもそれは決して私だけのものじゃなかったのだ、本当は。





あの話がふりかかったのは、中2の春。


春といってももうすぐ梅雨入りで、テストも近くなってきていた。



「…ねえ、雪子ちゃん」


「ん?あ、沙羅ちゃん?どうしたの」



話しかけてきたのはクラス替えから知り合った清水沙羅ちゃんで、彼女はうつむきがちに話した。



「あの、ね…雪子ちゃんに相談したいことがあって…放課後、時間ある?」


彼女からそういうお誘いは初めてで、私は嬉しくなって笑顔で頷いた。



「うん、いいよ!」


「ほんとう?よかった、じゃあ放課後屋上階段の踊り場でまってる」