「ん。ほんま、ほんま」 彼は画材の準備をして、深呼吸してからキャンパスに向かう。 背筋がいい彼は一度深呼吸で余計な力をぬいて、ぴしっとしたまま絵筆をにぎる。 とても静かだった。 わたしは横で座って見ているだけだし、彼は真剣な目で絵を仕上げていくだけだ。 そこにはクラスメイトの女子がささやくような好きもキライもないし、まっさらな気持ちで絵を描くことしかない。 彼にはそれが楽しいようだった。