「な…何…?」






「あの絵……ちゃんと完成したのを見せて」








「完成…?」




「紙に描いて、色もついてるのを…わたし…みたい」




見つめあったわたしたちは、長い間黙っていた。



断られるかもしれなかったけど、謝る前までの緊張感じゃなくて期待をしているような気持ちだった。










「………ええよ」






「っ…ほんとう!?」




嬉しくて嬉しくて、わたしは彼に何度も何度もお礼を言った。



やったやった、と笑顔で喜ぶわたしに、彼も照れたようにつられて笑った。





「あら、雪子ちゃん。陽平も、どうしたの?そんなに喜んで」



ちょうどお菓子とジュースを持ってきてくれた彼のお母さんが、わたしたちを見ておどろいていた。




「か…母さん…!」


母親が現れ、彼はあわてて笑顔を消してしまった。



「珍しいわねぇ、陽平も笑顔だなんて。よっぽどいいことがあったのね?」



くすくすと楽しげに笑う彼のお母さんは、わたしにそっと耳打ちをした。




「雪子ちゃん、ありがとう」




と、だけ。