私は硬直してしまう。


首筋に、宮根さんの息が掛かる。

髪の毛にくすぐられる。



「な、ななな、何をやっているんですか」

「ちょっと充電させてよ」


泣きそうなほどの弱々しい声。

だから私は嫌だとは言えなくなってしまった。


宮根さんは息を吐きながら、



「莉衣子ちゃんさぁ。俺のこと褒めてよ」

「……はい?」

「元気づけて。励まして。俺のことすごいって言って」


駄々っ子のようだ。

私は思わず笑ってしまい、



「宮根さんは、やればできる子です。なんてったって、営業課のエースですから。宮根さんがいなきゃ、うちの会社は潰れちゃいます」

「うん」

「宮根さんは大丈夫です。絶対に契約取れます。私も、みんなも、そう思ってます」

「うん」


声が、少し、力強くなった。



「ありがとう。元気になった」


瞬間、宮根さんはぺろっと私の首筋を、猫のように舐め上げる。

びっくりした私を見て、宮根さんは無邪気に笑った。



「じゃあね。お疲れ。また明日」


私の手に無理やりコーヒーの缶を握らせ、宮根さんはまたいつもの飄々とした態度で私に背を向ける。


私は、舐められた首筋に指を這わした。

ともされた熱が、そこから顔まで伝っていくのがわかった。