「青い封筒に入れてある。でっかく超重要って書いてるからすぐわかるよ」
ゴミ箱を漁り、社員食堂の椅子の下までくまなく探していた私に与えられた、それが宮根さんからの唯一のヒントだった。
どこに隠しやがった、あの野郎。
下手に誰かに拾われたり捨てられたりするようなところにはないとは思うけど、でも、万が一がないとも限らない。
私は午後の仕事すべて放棄で、『社運のかかった紙きれ』を探すために奔走した。
が、当然だけど、あの人が目立つ場所に隠してくれてるはずもなく、見つからないまま時だけが過ぎて。
足も、腰も、痛くなった。
宮根さんをちょっとでも見直した昨日の自分にも腹が立ち、理不尽すぎる課長に対してはもう恨み節しか出てこない。
「ちょっと、本橋ちゃん。何やってるの?」
「篠原さーん」
偶然通りかかったらしい企画課のアネゴに泣き付く私。
半泣きで事情を話す私に、篠原さんは、
「まったく、あの馬鹿は。あんまり本橋ちゃんをいじめるなって言ってるのに」
「やっぱりこれはいじめですか?!」
「いや、っていうか、あいつ変人だし? これがあいつなりの本橋ちゃんへの愛の示し方じゃない?」
「……はい?」
「あ、私余計なこと言った? まぁ、とにかく、社内のどっかで宮根のこと見つけたら、私が怒っといてあげるから。ね?」
篠原さんは、一緒に書類を探してくれる気はないらしい。
忙しいのか、何なのか、言い逃げるように、さっさとまた歩き出してしまった。
藁にもすがる思いだったというのに、みんなして、うちの会社の人は薄情だ。
「はぁ……」
私はふらふらしながらまた書類探しを再開した。