シェーカーを振った彼は、まっすぐに瞳を向けてたずねてきた。

「省略もできますが。最後に香りづけ、いかがいたしましょう?」

 誘いこむような眼差しを向けられ、私は応える。

「香りづけもお願いします。――さっきのやり方で」



 彼はオレンジの皮を手に取り、ゆっくりと絞った。
 爽やかな香りとともに、彼の右手の小指に沿ってしずくが流れる。



 彼は右手をあげ、私の瞳を見つめながら舌で舐めとった。
 


 そのしぐさから、舌から、私は目が離せない。
 ぞくりと快感が身体を貫いた。



 カクテルを私の前へ置いた彼は、小さな声で伝えてきた。

「あれだけ欲情を帯びた眼を向けられたら気がつきます」



 そして、彼はうっとりと見つめる私の目を捉えたまま囁く。


「どこをどうして欲しいの?」
「──濡れて滴るところを、舌で舐めとって……」



 熱に浮かされるようにつぶやく私へ、彼は魅惑的な笑みで応えた。



 心が乱される夜がはじまる。



End