新学期が始まって間もないため、学校自体が終わるのは比較的に早かった。それは閑にとっては本当に有難いことだった。
ホームルームが終わってさりげなく少年の方に目を向けるが、彼の姿はすでにそこにはなかった。
「いつの間に帰ったんだろう…」
と、閑は疑問に思ったが、特に大して気にはしなかった。



そして一人歩く帰り道。
引っ越してきた新しい家は、住宅密集地とは少しだけ離れた所に建っていた。近所に家はあるが、他の場所に比べて幾分か道路も広く、空き地も多く見られた。
近くに最近できたらしい小さな公園には、最初こそあまり人は来なかったが、閑の一家が越してきた頃には子供達の恰好の遊び場となっていた。

だが、然程住宅密集地と離れている訳ではないにも関わらず田舎にいるように錯覚してしまうのは、きっと家と高校を行き来する通学路の途中にある神社のせいだと彼女は思う。
それは、住宅街にぽつりとある鎮守の森がとても印象的に残る神社で、鬱蒼としたその森は何処までも広がっているような感じがした。

その神社に実際に足を踏み入れたことはなかったが、その時は不思議と足が神社の中へと向かっていた。
閑自身はもともと神社や仏閣は嫌いではなく、寧ろそこにある建物や全体の雰囲気などが気に入っていた。だから、新しい土地で見つけた神社を一度くらいはちゃんと見ておこうというちょっとした好奇心のようなものもあったのかもしれない。