今までにも何度か転校というものは経験していた。
だが、そのどれを思い返してみても良い思い出などあった例しがなかった。
だから、今回も端から期待などという胸踊るような感情は持っておらず、とにかく目の前の現実に耐えることに専念しようと閑は固く心に決めていた。
そして迎えた転校初日。
テンションは朝から最悪だった。そして教室の前で入ってくるように言われるのを待たされている今は、緊張や不安や、色んな負の感情が入り交じっていて早くもパンクしてしまいそうだ。実際、今まさに足が竦んでしまっている。
そんな時に教室の中から名前が呼ばれ入ってくるように担任から指示が出され、閑は重たく感じる足を思い切って踏み出したのだった。
自分の出せる最大のテンションで、閑は話し掛けてくるクラスメイトに対応していた。話しながらも頬の筋肉が引きつってしまっているのが自分でもわかる。
閑の席は廊下側の一番後ろの席だった。本当は窓側が良かった。だが、そんな本心は自分の心の中だけにしまっておいた。
そしてふと教室を見渡した時、不意に見つけたのだ。教室中に響き渡る生徒達の喧騒などまるで無いかのように悠然としていて、その存在自体に何処か現実味を感じさせないような少年を。
彼は窓側の一番後ろの席に座って、ただぼーっと窓の外を眺めていた。
閑の目に、彼の存在は何とも異質に映っていた。
彼の姿がそうなのではない。
何かが彼の周りを遮断しているかのように、彼の纏う雰囲気そのものが異質に感じるのだ。
見た目は良い。寧ろ良すぎるくらいだった。彼が誰かと話す場面を見ている訳ではないから性格までは分からないが、ルックスだけを以て判断する限り絶対に女子達が黙っていないような容姿だった。
だが、不思議と女子達は彼の方を見ようとしなかった。
というよりも、その存在にすら気付いていないかのようだった。
だから更に異様なのだ、と閑は確信した。
気が付けば彼の方ばかりをじっと見つめてしまっていた。はっとして閑は視線を元に戻すが、一度感じてしまった妙な違和感はなかなか拭えず、その後も気になったままだった。
だが、そのどれを思い返してみても良い思い出などあった例しがなかった。
だから、今回も端から期待などという胸踊るような感情は持っておらず、とにかく目の前の現実に耐えることに専念しようと閑は固く心に決めていた。
そして迎えた転校初日。
テンションは朝から最悪だった。そして教室の前で入ってくるように言われるのを待たされている今は、緊張や不安や、色んな負の感情が入り交じっていて早くもパンクしてしまいそうだ。実際、今まさに足が竦んでしまっている。
そんな時に教室の中から名前が呼ばれ入ってくるように担任から指示が出され、閑は重たく感じる足を思い切って踏み出したのだった。
自分の出せる最大のテンションで、閑は話し掛けてくるクラスメイトに対応していた。話しながらも頬の筋肉が引きつってしまっているのが自分でもわかる。
閑の席は廊下側の一番後ろの席だった。本当は窓側が良かった。だが、そんな本心は自分の心の中だけにしまっておいた。
そしてふと教室を見渡した時、不意に見つけたのだ。教室中に響き渡る生徒達の喧騒などまるで無いかのように悠然としていて、その存在自体に何処か現実味を感じさせないような少年を。
彼は窓側の一番後ろの席に座って、ただぼーっと窓の外を眺めていた。
閑の目に、彼の存在は何とも異質に映っていた。
彼の姿がそうなのではない。
何かが彼の周りを遮断しているかのように、彼の纏う雰囲気そのものが異質に感じるのだ。
見た目は良い。寧ろ良すぎるくらいだった。彼が誰かと話す場面を見ている訳ではないから性格までは分からないが、ルックスだけを以て判断する限り絶対に女子達が黙っていないような容姿だった。
だが、不思議と女子達は彼の方を見ようとしなかった。
というよりも、その存在にすら気付いていないかのようだった。
だから更に異様なのだ、と閑は確信した。
気が付けば彼の方ばかりをじっと見つめてしまっていた。はっとして閑は視線を元に戻すが、一度感じてしまった妙な違和感はなかなか拭えず、その後も気になったままだった。