「富士家の凛々香お嬢様の執事」
そんな・・・だって、薫は!
「だから、お前の、姫乃お嬢様の執事じゃないんだ。」
「なんで!?なんで、あんな女の家の執事なんかに!」
「あんな女じゃない。凛々香お嬢様だ。俺のお嬢様。」
俺の、お嬢さま?
「違うだろ?薫は私の」
「違うんだ!」
「・・・っ」
「いい加減わかれよ。現実逃避すんな。俺は今は富士家の執事だ。」
そんな、こんなこと間違いだ。何かの間違いだ!
「今凛々香お嬢様と良い感じなんだ。だから」
薫っ、何を言っているんだ!
薫のお嬢様は私で、薫の彼女は―――
「そのうち、凛々お嬢様と付き合うつもり。」
私の中で何かが割れたような音がした。
この割れた音は・・・私の心だ。
「つ、きあう?」
「あぁ。最近凛々香お嬢様に付き合ってほしいって言われたんだ。だから、引き受けるつもりでいる。」
「・・・・・・」
「だから、姫乃、邪魔しないでくれよ・・・」
「じゃま?」
「そう。姫乃は俺にとって今、邪魔なんだっ。」
薫の顔をうまく見ることができない。
私の視界はすでに涙でいっぱいになっていた。
今、薫はどんな表情で私に話しているのだ?
どんな気持ちで、私に話しかけているの?