その声は、ほんの3日前まで当たり前に聞いていた声で。


でも、とても懐かしくて、その声を聴きたい人だった。



「・・・薫。」

「あのさ、ちょっと話したいことがあるんだけど。昼休み時間いいか?」



「・・・うん。」


実を言うと嬉しかったのに。
でも、やっぱり不安は大きい。


何を言われるのか。
凛々香のことを言われるのだろうか。

やはり、薫が好きなのは凛々香なのだろうか・・・。



「はぁい!じゃぁ、席ついて!」


先生が教室に入ってきた。
薫も私にそれだけ伝えると自分の席に戻っていった。



それからの時間など昨日と同じで、いつの間にか時間が過ぎていたという感じだ。

今日も持ってきたお弁当に手をつけることができそうにない。
そして―――




「姫乃、こっち」

そう言われてついてきた場所は、昨日私が一人でいたところだった。


いや、薫にとっては昨日凛々香といたところなのだが。



「姫乃、最近大丈夫か?ちゃんと弁当食ってないだろ?家でもそうなのか?」

「・・・薫に関係ないだろう。」


「確かにな。俺には関係ないか。もう執事でも彼氏でもないもんな。」


その言葉がまた私の心に傷をつけていく。


「でさ、話なんだけど。」


なんでそんなにも普通に話すのだ?

私はこんなにも不安でたまらないのに、薫はそれに気づいてくれそうにない。


薫にとって私は本当に今はどうでもいい存在なのだろう。


「俺さ、今執事やってる。」

「・・・え?」