「ご準備はできましたか?」
「あぁ。完璧だ。」
「今日も可愛らしいですね、お嬢様は。」
「そんなこと、キミに言われなくてもわかっている。さぁ、行くぞ。」
毎回こうなんだ。
恥ずかしいと自分から逃げてしまう。
何度この自分の性格を悔やんだことか。
薫に「正直になれ」と言われたはずなのに、今でも正直に言えないことはたくさんある。
これから先もこの調子なのだろうか。
自分のことなのに、自分を変える勇気が出ないんだ・・・。
そして、今日も学園へ着いた。
また、憂鬱な一日が始まるのだろうか。
「いってらっしゃいませ、お嬢様。」
「あぁ。キミもな。」
そして、教室へ向かう。
しかし、その時ある光景が目に止まったのだ。
それは・・・
薫―――
そして、凛々香―――
昨日といい今日といい、あの二人が一緒にいるのを目にすると心が痛い。
そんな二人の横を何もなかったかのように通り過ぎようとした。
でも、できなかった―――
「あ、姫乃さん。おはよう。」
「・・・おはよう。」
「どうしたの?元気ないのね?」
「そんなことないよ。ちょっと風邪気味なのかもしれないけど。」
「そう、お大事にしてね?」