「お嬢様!」
「ん?」
「こんなところで寝ていたのですか?」
「こんなところ?・・・」
こんなところ、と言われても私は部屋で寝て、いない。
ここはシロのハウスがある部屋。
そうか、確かに昨日の夜はここであのまま寝てしまったのだった。
と、思いつつシロのハウスを見る。
しかし、そこにシロの姿がなかった。
「シロはどこに行ったのだ!?」
「シロは、柏木さんが散歩に連れて行ってくださいましたから。いなくなったわけではございませんよ?」
「そうか。ならよかった。」
また、夜が明けて朝が来た。
朝が来たということは学園へ行く時間になったということだ。
またあんな学園へ行くのかと思うと、足取りはかなり重かった。
「お嬢様、本日は学園はどうなさいますか?」
「・・・・・・。行きたくない。」
「では、」
「でも、行きたいのだ・・・。会いたいのだ。近くにいて、遠くから薫のことを見ていたいのだ・・・。」
言葉は矛盾しているだろう。でも、それが私の今の気持ちだ。
「わかりました。では、準備の方を急いでください。10分ほどお時間が過ぎてしまいましたので。」
「わかった。」
そして、いつもと同じように、いや、少し違うことはあるが。
香織がいなくなってしまったからは、私の髪型は自分で結っている。
なぜだか、香織には私の髪型を結ってほしくなかったのだ。
薫は私にいつも髪を結い終えてから「お嬢様の髪はきれいだな」と言ってくれていた。
あの時はいつも照れていて何も言えなかったが、今なら正直に言える。
本当はすごく嬉しかったのだ。
あの時いつも正直にこの気持ちを伝えられていたら・・・。
恥ずかしくて言えなかったのだ。
またそんな自分を後悔する―――