シロがふっと笑う。

優しい笑顔だ。



どことなく誰かに似ているような気がした。
だが、今すぐには思い出せない。


「では、お嬢様、お食事を全くとられないというのはやはり少々気になりますので私が手作りしたお菓子など、いかがですか?」


「お菓子?」

「実は、こう見えて暇な時間さえあればお菓子を作っておりまして。良かったらお嬢様にと思いまして。」

今どきの男子がお菓子作りとはなかなか珍しい話だ。

まぁ、私も珍しい女だとは思うが。



声を大にしては言えないが、お菓子作りなどしたことは・・・



「本日はスコーンを焼いてみました。」

「スコーンか・・・。なら、少し頂こうか。」
「かしこまりました。」

特にスコーンが好きなわけではない。

しかし、ここまで聞いておいて「食べたくない」などと言えるわけもなく。


今日一日を通してみてもろくなものを食べていない。


香織が言っていたようにそろそろ私的にも、体調が気になる。



自分の体でありながら、今日はかなり無理をさせてしまっただろう。


「お部屋の方へお持ちいたしますので先に上がっていてください。」

「すまないな。」


そして、私は先に自分の部屋へ戻った。


5分後、香織がスコーンと紅茶を持って来てくれた。


「ダージリンティでございますが、よろしかったですか?」
「あぁ、構わない。」


カップに注がれたダージリンティはとても良い香りを漂わせた。

そういえば、薫も初めて私に出した紅茶はダージリンティだったな・・・。


「お嬢様?」
「ん?」

「どうぞ。形はほんの少し歪んでしまいましたが、味は保障いたします。」

「そうか。ありがとう。」

そのスコーンは確かに少しだけいびつな形をしていたが、美味しそうなにおいがしていた。