昨日もこんなことがあったような気がしたのだが。
確か、シロが帰ってくると、香織がいなかった。
今日もまた、どこに行ってしまったのだ?
「柏木ー!」
「はい、お嬢様。」
「犬正はどこに行った。」
「え、犬正さまでございますか。先程、図書館でお見かけしましたが。」
「図書館、姫乃ライブラリーか。」
「はい。どうかされましたか?」
姫乃ライブラリーに何の用事なのだろうか。
もしかすると、シロを探してくれているのだろうか。
それならば、早く言ってやらないと。
「柏木、シロを用意してくれたハウスに連れて行ってくれないか。もう夜だ、寝かせてやってほしい。」
「はい、かしこまりました。」
シロを柏木に預け、私は姫乃ライブラリーへ足を運ぶ。
いつもならこの時間はカギがかかっているが今は開いている。
ということは、やはり香織がいる、もしくはいたということだろう。
ライブラリーの中は静まり返っていた。
人の気配はまるでない。
香織がいるというような感じではないということだ。
となれば、この場所から出て行ってしまったのだろう。
なら他の場所を探そうとライブラリーの扉に近づいたとき―――
「お嬢様」
「あっ、キミ・・・。」
「お食事はとられましたか?」
「いや、食べる前に出てきてしまった。」
「なぜですか。あ、申し訳ございません。私がお持ちするべきことをっ、申し訳ございません、お嬢様!」
「そんなに気にすることではない。食欲がないときには別に少々食べなくても大丈夫だ。」
「ですが、お体には」
「キミに、シロが先程戻ってきてくれたということを伝えようと思っただけだ。」
「シロ、が。戻ってこられたんですね。それはよかった。」