「・・・かしこまりました。」
私の数歩後ろをシロが歩く。
二人の間に会話はなかった。
おそらくシロは私のことを考えて何も話してこないのだろう。
しかし、よく考えてみれば、荷物を取りに行かなければならない。
おそらくこの時間なら、もう教室には誰もいないだろう。
荷物を置いて帰るわけにもいかない。
「シロ、私は教室へ行って荷物を取ってくる。先に車へ戻っておいてくれるか。」
「はい。わかりました。柏木さんに校門のなるべく近くへ行ってもらいように伝えておきます。」
「頼んだぞ。」
そして、私は一人教室へ向かった。
教室のドアを開ける。
誰もいないはずのその教室。
しかし、一人だけ、教室の中にいた。
「っ凛々香」
「あら、姫乃さん。どうしてここに?」
「どうしても何も・・・ここは私の教室だから。」
「あ、そっか。薫さんと同じクラスだったわね。」
薫・・・その言葉がを聞いたとき、背筋がゾクッとした。
「なぜ、ここに凛々香がいるの。」
「お昼休みの忘れ物を取りにね。」
「忘れ物?」
「えぇ。英語のノートをね。」
「この教室で授業でも受けたの?」
「薫さんに貸したままだったから。6限目は美術でいないから勝手に取ってって言われてね。」
「・・・そう」
「英語の先生が怪しんでるころかな。そろそろ戻るわね。じゃぁね。」