「このままお帰りになりますか?」
「今は何時なのだ?」
「おそらく、6限目が始まるあたりかと思いますが。」
「そうか。もうそんな時間か。」
「どうされますか?」
このまま教室に戻ればまた薫に会うことになる。
しかし、今薫はもしかするとクラスの皆から質問攻めにあっているかもしれない。
なぜ、私を探しに行かなかったのか―――
そしてきっと、薫なら・・・本当のことを話すだろう。
それなら、私は今教室に戻ると皆にどんな目で見られる?
軽蔑か?嬉しいか?楽しいか?
それなら私は・・・
「お嬢様。本日の6限目は確か」
6限目。今日の6限目は
「「美術」」
二人の声が重なった。
「それなら、授業の方へ出られたらいかがです?お嬢様は美術がお好きというのを」
「薫から、聞いたのか。」
「・・・はい。」
「そうか。なら」
――― 帰ろう ―――
「え?お嬢様?」
「今日は帰ろう。今日の美術はうまくできそうにない。こんな日に絵を描いてもよい作品などできないからな。・・・帰ろう、シロ。」