薫が私のすべてだった。


薫がいてくれたから、今の私がいるのだ。

でも、今はもうそばに薫がいない。



そんな私は、私じゃない。


「そんなに・・・あの人のことが好きですか?」


「うんっ」

「愛してるのですか・・・?」


「うんっっ」


トサッ―――





背中に温かさを感じた。

その温かさはとても心地が良い、人の温もり。


けど・・・



「し、ろ・・・?」


「僕は薫さんみたいに、たくましくもないし、何もできないかもしれない。」


薫じゃない・・・。


「それでも、今日からは僕がお嬢様の傍にいますからっ。だから、そんなに泣かないでください。僕が、一緒にいますから。」


薫、じゃない。これは、シロなのだ。


今、私を抱きしめてくれているのは、シロなのだ。

これは、現実。

夢では―――


ない。





「薫さんのようになれないかもしれないけど、こうやってお嬢様の傍にいることは僕にだってできますから。」


「シロ・・・」


「薫さんのことが好きなら、それでいいじゃないですか。愛してるなら、それでいい。」

「し、ろぉ・・・っ」