「ちょ、ちょっと待て。私は・・・そうか!これは夢だ!そういうことか。だから薫は出て行ったのか。理由もなく薫がこの家から出ていくことなどありえない。」


そうだ、そういうことだ。


きっと今私は眠っているのだ。だからこんな夢を見てしまっているのだ。

きっと今頃、現実ではうなされているのだろうな。



「シロ、か。」


『キャンッ』


「よし、お前の名前は犬正シロだ。」


『ッキャン!』

「夢というのはすごいのだな。人間が犬・・・いや、犬が人間になるのか。まぁ、どちらにしてもすごいことだ。」


これは夢だ。

夢なのだ。


きっともう少しすれば目が覚めて現実へ戻るのだ。

そうすればまた、薫と一緒に学園へ登校し、幸せな毎日を送るのだ。


「さて、こんな時間だ。寝るかな。」


夢の中で寝るというのはなんだか少しおかしな気もするが、仕方ない。


ここで寝ないと、現実で目が覚めないかもしれない。
それは困る。


寝坊、という可能性の前兆かもしれないからな。

ここですぐに寝て、目が覚めたら―――


という私の中の流れだ。


「シロも・・・自分の部屋で寝なさい。人間の体になるのはこの部屋ぐらいにしておくのだぞ?あ、夢なのだから関係ないのか。」

『クン?』


「まぁ、とにかく寝よう。今日の夕食はなしだ。・・・あまりいい夢ではなかったからな。食欲もわかない。お風呂は・・・入ろう。やはりレディーとしてそこは。」


ということで、夢の中でありながら私はお風呂に入った。
さっぱりとしてバスルームから出て、部屋へ向かう。


「お嬢様」

「お、シロ。」


「何か勘違いを」

「私は寝るぞ。だから、早くシロも寝るんだ。おやすみ。」


「ですから、おじょうさ」


バタンッ―――

「ま・・・」



そして、私は布団へ入った。


この変な夢のおかげでとても疲れたのか、すぐに寝入ることができた。


しかし、そこでもまた夢を見た。

その夢は・・・