「その呼び方も」

「なら、お嬢様のお名前は?」


「えっ、私の名前?」


「わかっていますよ?でも、私はお嬢様の口からお名前を聞きたいのです。」

「・・・っ」


「だめですか?」


そんなこと・・・


「・・・だめなわけないだろう。」


恥ずかしくてためらってしまう。



「では、お嬢様のお名前は?」


「・・・鬼城、姫乃。」

「姫乃。」

「そうだ。・・・これでよいか。」



「えぇ。充分です。」



「なら、さっきの話は」

「普通に、だろ。」


「あぁ。」


優しく微笑むその顔は私をおかしくさせる。


なぜ、この時私はこんなことを言ったのだろうか。


「もう一つ、頼みがある」

「頼み?」


自分の中に芽生えた新しい新芽。


その芽は、まだ芽生えたばかりなのに、すでに蕾をつけ始めていた。


「すぐに、答えてくれとは言わない」

「はい?」


そして、その蕾は花びらを一枚一枚四方八方へ開き始めた。


「薫。」

「・・・・・・」


薫が私の目を見る。
私が薫の目を見つめる。