「んっ・・・ん?」


「起きたか。」

「あ、えっ!お嬢様、大丈夫ですか?」

「君こそ大丈夫か。」


「あ、ええ。最近よく眠れていなくて、少しだけ疲れていますけど。」

「しっかり寝ないと仕事がうまくできないだろう。」


「そうですね」と言いながら微笑むこの男。

その時なぜか、心の中が少しだけ安らいだような気がした。


「お嬢様、緋絽さまと真紀子さまは・・・」

「帰ってくるのが遅い時間なのだろう」

「・・・・・・」

「明日、出ていく時間も早い。だから、私に会うこともなく時間だけが過ぎていくのだろう。」


「・・・・・・」

そんなこと、わかっていることだ。

いつものことなのだから。


いつも、いつの間にか帰ってきていて、でもその時間には私は寝ている。

そして、私が目を覚ます前に仕事へ出かけて行ってしまう。


今日、父さまと母さまに会ったのはいつぶりだったろうか。


「お嬢様、本日の誕生会は」
「いらない」


「え、」

「毎年ないではないか。だから同じだ。今年も誕生会などない。」

今日は、もともと父さまと母さまがいるからということで誕生会を行うことになっていた。


しかし、もう関係なくなってしまった。


「ですが、お嬢様は楽しみにされていたではないですか。」

「父さまも母さまもいないのに!楽しみなわけないではないか!」
「ですが」

「君には関係ないだろう!雇われている身で、私にくちごたえするな!」
「わかりました」


先程まで、優しい口調だったその面影はどこかにいってしまった。


男の顔を見ると、どことなく寂しそうな顔をしていた。

「なぜ、そんな顔をするのだ・・・」


「お嬢様はもう少し正直になるといいですよ。」